基礎知識 2017.11.19 日

ハプログループはミトコンドリアDNAで分かる

ミトコンドリアの中に含まれるDNAには種類があり、アルファベットと数字を組み合わせた「ハプログループ」という分類がされています。自分の祖先のルーツが分かるこの分類について、ご紹介します。

ミトコンドリア

ミトコンドリアは細胞内でエネルギーを生み出す働きをしている細胞です。

その中に含まれるDNAを紐解いていくことで自分の祖先のルーツや才能、遺伝的な病気の可能性など様々なことがわかってしまいます。

そんなミトコンドリアDNAにも種類があり、アルファベットと数字を組み合わせた「ハプログループ」という分類がされています。

今回はこのハプログループについてご紹介していきます。

ミトコンドリアとはどんなもの?

ミトコンドリア

出典 : http://www.aaproject.co.jp/l-carnitine/mitochondria.html#

ミトコンドリアはほとんどすべての生物の細胞に含まれている細胞内構造の一つです。

中学校の生物の授業などでその名前と構造を学んだ記憶がある人もいるのではないでしょうか。

先程も書いたようにミトコンドリアの働きは細胞内で呼吸をし、エネルギーを生み出しています。

呼吸によって取り込まれた酸素は血液に取り込まれ、その後血管を通りミトコンドリアへと運ばれます。

結果この酸素でミトコンドリアが呼吸することにより糖や脂肪を分解しエネルギーを生み出しています。

ではなぜこのミトコンドリアを調べると様々なことがわかるのか不思議ですよね。

私たちの体を構成する細胞は全部で60兆個以上あると言われていますが、その一部を除く細胞一つ一つに核と呼ばれるものがあります。

ヒトの場合はその核の中に両親から受け継いだ遺伝子情報が詰まった23対46本の染色体(遺伝子)があります。

ですが1968年にミトコンドリアの中に、通常の細胞の核が持っている遺伝子とは別の遺伝子が発見されました。

これをミトコンドリアDNAと呼びます。

次はこのミトコンドリアDNAについて詳しく見ていきましょう。

ミトコンドリアDNA

ミトコンドリア

出典 : https://first-genetic-testing.com/gene/haplo.html

DNAは通常4種類の塩基配列並んだ二重らせん構造ですが、このミトコンドリアDNAは丸い輪の形をしていて末端がありません。

このミトコンドリアDNAは母親のもののみ遺伝する母系遺伝の性質があります。

先程ご紹介したように遺伝子情報は両親から平等に受け継がれますが、ミトコンドリアは全て母親から受け継いだものなのです。

つまりこのミトコンドリアDNAを紐解いていくことで母系ルートで自分のルーツにたどり着くのです。

母系ルートを辿るとすべての人が16~20万年前のある一人の女性にたどり着きます。

この現生人類の最も近い共通女系祖先を「ミトコンドリア・イブ」との愛称で呼んでいます。

ミトコンドリアの全塩基配列を用いて道筋を枝分かれさせた図が人類の系統樹です。

この系統樹の末端の型がハプログループと呼ばれ、現在ヒトは数十のハプログループに分類されています。

次はこのハプログループについてご説明します。

分かりにくいハプログループとは?

ハプログループ

出典 : https://first-genetic-testing.com/gene/haplo.html

ハプロとは「単一の」という意味の学術用語です。

つまり母系からのみ遺伝する「単一の」DNAであるミトコンドリアがどこに分類されているかを表すのがハプログループです。

ハプログループはアルファベットと数字の組み合わせで

なぜハプログループが出来たのでしょう。

それは人類が歩んできた歴史に答えがあります。

私たちの祖先である新人は今から16~20万年前にアフリカ大陸で誕生し、7万年程前に世界各地へと広がっていきました。

この進化論を「アフリカ単一起源説」と呼び、現在の定説となっています。

進化の過程で当時存在していたネアンデルタール人や北京原人と交雑し、そのDNAが受け継がれたものもあります。

そのため様々な枝分かれを遂げ、ハプログループというものが生まれました。

もちろん日本人も様々なハプログループに分類され、日本人が該当するのはなんと12種類もあります。

次はこの日本人のハプログループ12種類について解説していきます。

日本人のハプログループ

ハプログループ

出典 : https://first-genetic-testing.com/gene/haplo.html

日本も北海道や本土、沖縄とその地域によってミトコンドリアDNAに差が現れます。

自分がどんなハプログループに属していて、どんなルーツなのか調べてみるととても面白いものです。

そしてハプログループにも生まれ育った地域の差や生活などに個性があります。

次は日本人に見られる12種類のハプログループについて解説していきます。

ハプログループD

ハプログループMから分岐したもので、アフリカ・イラン・中央アジアのどこからか内陸を通り東アジアへ広まったグループです。

日本人に多く見られるだけでなく、実際に南西諸島やアンダマン諸島・チベット高原で多く確認されています。

このグループはアジア圏最大のグループで、日本人の約4割を占めています。

分岐してから3~4万年前の年月を表すほど同じグループDでも様々な分岐が行われています。

そのためアジア最古のグループとも言われています。

ハプログループB

ハプログループBは先程のハプログループDについで2番目に大きい集団で、日本人の約15%がこのグループです。

約4~5万年前にアジアで分岐し、新天地を求めて東南アジアへと広まっていきます。

大陸から離れた島々へも広く分布し、優れた航海技術を持っていたことが伺えます。

その凄さはハワイの先住民であるポリネシア人が証明しています。

このポリネシア人の約9割がこのハプログループBで、海を渡ってハワイ島へたどり着いたことが推察できます。

さらにアメリカの先住民からも検出されているので、アジアから太平洋を横断し、アメリカ大陸へたどり着いたことになります。

ハプログループM7

4~5万年前に東中国で誕生したグループで、地殻変動で沈んだ「スンダランド」と呼ばれる陸地を起源としています。

氷河期に海の水が凍り、地続きになったことで台湾や、インドネシア、フィリピンに広がったと考えられています。

日本へは沖縄や北海道を通ったと考えられており、本州7%、北海道(アイヌ人)16%、沖縄23%の割合となっています。

このM7グループは日本以外では朝鮮半島周辺でしか確認されておらず、日本固有のグループという見解です。

ハプログループA

北アジアで3~5万年前に誕生したグループです。

アジア地域では少数派で、シベリアや北アメリカでは過半数を占めています。

旧石器時代はシベリアなど極寒の地域でマンモスを主食とする優秀な狩猟民族だったのではないかと推察されています。

誕生場所として最も有力なのは生物進化の博物館とも称されるロシアのバイカル湖です。

ハプログループG

最終氷期の氷河期を超えた北方民族で、約3万年前にシベリア高原で誕生しました。

最終的な活動場所は中国東北部、朝鮮半島、中央アジアの北方に限られています。

日本人には約10%がこのグループです。

南方でまったく分布した形跡がないことから寒い場所を好んで生活していたことが推察されます。

ハプログループF

このハプログループFは日本では約5%とごく少数の人のみですが、東南アジアでは最大規模の人口を持つグループです。

ニコバル諸島50%やインドのアルナーチャル・プラデーシュ州31%、フィリピン29%、ベトナム26%などその数字から見ても明らかです。

オーストロアジア系民族やオーストロネシア系民族で高い割合で検出されています。

また、アメリカ大陸では検出されておらず、海は渡っていないと考えられます。

北方でもあまり検出はされていませんがシベリア中央部のエニセイ川やケット川などの流域に住む少数民族「ケット人」からは27%の頻度で検出されています。

ハプログループN9

ハプログループN9はN9a、N9b、Yの3つに細かく分けられます。

N9aは東アジア、中央アジア、東南アジアなどでN9bは日本、沿海州となります。

Yはさらにオホーツク海沿岸やマレー諸島に絞られます。

N9aは台湾の先住民などで多く検出され、N9bは日本以外ではほとんど検出されません。

このグループN9bは日本国内でも北へ行けば行くほど多く検出され、北海道のアイヌ民族まで登るとYとN9bが混在します。

もしこの型であればアイヌ民族だった可能性もあります。

ハプログループM8a

中国の漢民族集団の中に一定の割合で存在するグループで、中国北部で誕生したと考えられています。

北方漢民族の系譜とも言われ、日本人には約3%ほどしかいない希少なグループです。

新石器時代以降に黄河流域から南へ移動した民族の一部ではないかと言われています。

ハプログループC

中央アジアからアメリカ大陸まで広く分布しているグループですが、日本では数がとても少ないです。

約3万年前に中央アジアの草原地帯で誕生したと考えられていて、遊牧民国家の勢力拡大によって広く分布したのではないかと言われています。

南アメリカから中央アメリカにかけてのアメリカ先住民で最大80%も検出されており、その勢力拡大力は相当なものであったことがわかります。

ハプログループZ

ハプログループCの親戚にあたるこのグループはフィン人、サーミ人、ロシア人、ハザーラ人などの北方で検出されるほか、朝鮮半島や日本人からも検出されます。

ハプログループNと同じような拡散経路を辿ったのではないかと言われています。

元々は中央アジアで誕生した民族が、北極海に面した地域の先住民を介してヨーロッパまで伝わったとの説があります。

ハプログループM10

アジア全体で見てもごく少数のグループですが、最も多い国がチベットで人口の約8%と言われています。

中国の北部で誕生したと言われていますがチベット以外にも日本、朝鮮半島、中央アジアに分布しています。

ですが、その数は少数なのでとても貴重と言えます。

ハプログループHV

このグループはアジアが起源ではなく、ヨーロッパで誕生したグループです。

近代以降に日本へ入ってきたハプログループと考えられ、日本人にこのグループが現れるのは稀です。

国際化が進む現代では今後こういったグループがより増えていきます。

ミトコンドリア、ハプログループまとめ

いかがでしたか?

今回はハプログループについてご紹介しました。

聞き馴染みのないハプログループですが、このグループで自分のルーツがわかるなんてすごいですよね。

自分の祖先がどういった場所で生まれ、どういう経緯で日本へ来たのか探ってみるのはとても面白いです。

ミトコンドリアDNAを解析すればできますので、市販の検査キットを購入してぜひ検査してみてください。